悼む人
第140回直木賞受賞作.
人の死を悼む人がいる.
新聞やラジオで, 事故や事件によって亡くなった人の現場を訪れ, 痛みを捧げる青年.
その青年を 3 人の視点で描いている.
一人は, その青年と取材で知り合った記者.
彼は, その青年を否定しつつもその謎の行動に興味を持ち, 次第にその青年に惹かれていく.
そして, 何故その青年がそのようなことをするのかに疑問を持ち始める.
一方, 自信の父親も死期が近づいてきている.
肉親を失い, 彼自身忘れたいたことに気づき始めた.
二人目はその青年の母親.
末期ガンに見舞われ, 死期が近い.
それでも必死で生きようとしている.
一方で, その青年の妹には新たな命が宿った.
去りゆく命と新たな命.
悼みを続けている青年の最も主観的に見守り続けている家族が描かれている.
三人目は自分の夫を殺した女性.
その青年が悼んでいるところに遭遇し, 以降彼と行動をともにする.
明かされる彼女自信の過去.
次第に理解し始める女性.
そして, ついには, その女性も新たな一歩を踏み出す.
本書が問うたのは, 人の死と他者への愛だと思う.
人はいつかはこの世を去る.
その時に, その死をどう受け止めるか
当然親しい人が悲しむと思う.
でもそれをずっと引きずり, 心に刻むことはものすごくエネルギーがいる.
故に次第に, 忘れていってしまう.
そのことに対して, "悼む人" は全ての人の死を忘れないように全てを背負い込もうとしている.
確かに奇特だと思う.
そんなことが出来るのは, 神様だけかも知れない.
その神様みたいな人を, 本書では人に委ね描いている.
辛すぎる.
重すぎる.
それが本書に対して, 最初に感じたことだった.
もう一つは, 人の死について.
人の死について, 重い軽いと言う話はないはずである.
が, 新聞で大きく取り上げたら, その人の死は重く, 新聞やテレビで放送されない人の死は軽く見られがちである
一理あるとは思う.
でも本来, 人の死への悲しみはその人の近しい人, 親しかった人にしか分からないと思う.
いくら, マスコミが騒ぎ立て, 口で何を言おうと, そんなことは時間が経てば忘れてしまう.
そんなことしたら事件が起きても何も報道されない, 事故が起きても知らされず, 同じような事故が繰り返される.
と言う人もあるだろう.
それも一理ある.
が, 伝えるべきことは, その事件や事故であり, 被害者のことではない.
そして, 加害者の家族のことでもない.
その領域には外野は踏み込んではいけない気がする.
踏み込んだならば, 悼む人と同様その全てを背負い込まなくてはいけないのではないだろうか.
以前読んだ"クライマーズ・ハイ"の一節にこのような言葉があった.
"私の父や弟の死に泣いてくれなかった人のために、私は泣きません。 たとえそれが、世界最大の悲惨な事故で亡くなった方々のためであっても。"
本書はそのことをある種具体的に, そしてある種抽象的に描いてくれたのかもしれない.
人の死とはその人の思いの中にだけ大切にしまっておくべきものであると....
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