木漏れ日に泳ぐ魚

登場人物は実質二人.
男が一人に女が一人.
舞台は一緒に住んでいた部屋.
時間は夜から朝まで.

お互いがある人物を殺したと思いこんでいて, それを自白させようとしている.
ここまで聞くと, ミステリーぽく聞こえるが, 全くそんなことはなかった.
この後, 物語は二転三転するが, 姑息なサプライズを感じさせるに過ぎなかった.
そして, 全てが明らかになった時に女は部屋を出て行き, 前の恋人のところに電話をした.

ストーリー的にはこんな感じだった.
何度か, 物語をひっくり返していながら, それが伏線になるわけでもなく, 本線かと思えば, 実は複線だったみたい感じの書き方だったので, 読んでいて正直疲れたというのが, 正直な感想だった.
ただ, この本で唯一面白かったのが, 主人公の男と女が節ごとに交互に語り部になっているところである.
時間は一本でありながら, つまり, 語り部が変わっても基本的には時間は戻らない(もちろん回想部分はあるが).
このような手法は非常に面白く, それだけなら, かなり読みやすくなったのだが, どんでん返しになっていないどんでん返しが余計だった.
それが, 小説全体を陳腐な作品にしてしまったような気がする.

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小説以外

恩田氏が書いたエッセイ集.

エッセイ集の名の通り, 本人が書いたエッセイをまとめだけである.
個々のエッセイには惹かれるものもあり, かなり面白いものもあるが, 全体を通してみるとごった煮状態で, いまいちまとまりがない.
故に読んでいても, なんとなくだれてしまう.
単に書いた順番にではなく, テーマごとにまとめたりするだけでももう少し読みやすくなると思うのだが...
角田光代氏のエッセイ集"しあわせの値段"などはテーマが絞られていて非常に面白かったが, それ故ちょっと残念な気がした.

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黄昏の百合の骨

今年読んでいる恩田氏の本は結構面白い.
単に巡り合わせだけかも知れないが, 恩田ワールドでもグレードの高い作品に当たっている.
今回の"黄昏の百合の骨"もそうだった.

祖母の遺言によって, 祖母が住んでいた家に戻ってきた水野理瀬.
そう, この話は"麦の海に沈む果実"の続編として書かれている作品だった.
その移り住んできた家には血の繋がっていない叔母が二人住んでいた.
そして, その家は「魔女の家」と呼ばれている家だった.
その魔女の家で, 謎の毒殺, 失踪, そしてその家に隠されている秘密が次第に明らかになる.
事件の歯車が一つずつかみあわさっていったときに, 全てが明らかになるのだが, そこで話は終わらない.
最後の最後でどんでん返しが待っていた.

恩田氏のライフワークとして, 影の存在としての "憂理" が出てくる作品が多い.
"麦の海に沈む果実"もしかり, "黒と茶の幻想"もしかり.
その流れの中でもう一人の主役がいた.
それが, この本でも主役の水野理瀬である.
そして, この水野理瀬が出てくる話はかなり緻密に書かれている.
今回の作品もそうだが, 短編["朝日のようにさわやかに"(水晶の夜、翡翠の朝)や"図書室の海"(睡蓮)]でも(本人がでてこなくても)完成度は高いと思う.
今回の"黄昏の百合の骨"においても, 誰が敵で誰が味方かが分からないうちに物語が進んでいく.
それが終盤に一気に押し寄せてくる.
確かに前半はちょっとだれている部分もあるが, 後半のスピード感は, こう言っては失礼だが, 恩田氏らしからぬものを感じた.

恩田氏は水野理瀬&憂理シリーズや常野物語シリーズなどのシリーズものを手がけているが, 是非, また, 水野理瀬ミステリーシリーズとして一冊書いて欲しい.

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象と耳鳴り

恩田氏にしては珍しく, 同一人物による短編集.

元判事でミステリー好きの主人公が自身の回りで起きるちょっと変わった事件の謎解きをする話である.
その判事には二人の子供がいて, 長女は弁護士, 長男は検事という司法一家.
その 3 人が本書で活躍している.

事件の内容は, 本当に事件なのか, 単なる推理なのかは定かになっていない作品が多いが, 個人的には恩田氏の作品としては異質で面白かった.
但し, 本書の途中から, 事件の性質がちょっと変わってくる.
実際の刑事事件であったり, 答えが分かっている問題を解かせるような話だったりしている.
つまり, 答えがあり, それを理詰めで攻めていくようなストーリー展開になっている.
こうなると, 月並みな話になってしまい, 興味が失せてしまった.
あくまでも答えのない問題を主人公がどう読み解くかに焦点をあてた物語にした方が, 本書自体の筋が通り面白かったのではないだろうか.
特に"待合室の冒険", "机上の論理", "往復書簡" 辺りは手を変え品を変えてはいるものの, その前の作品に比べて, 個人的には見劣りした.
この辺りに著者の迷いが見え隠れする.

とは言っても, 久々に恩田氏らしい恩田氏の本に巡り会えた気がする.
もう少し時間が経った時点で続編を書いてくれればと思う.

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ユージニア

金沢(本書では明記していないが, 推測するに金沢だと思われる)で起きた, 毒物混入による無差別集団殺人事件.
その犯人が分からぬまま事件は迷宮入りになるかと思われていた.
その矢先, 被疑者が同じ毒物で自殺した.
そして事件は解決した.

それから何年か経ち, その事件を記した本が出版された.
その本がきっかけで再び, 事件が脚光を浴びることになる.
事件の真相はいかに....

第三者的な視点で再度事件を洗い直すことになるのだが.....果たして事件の真相は明らかになるのだろうか?

同じ恩田氏の著書である "Q&A" に似た切り口で書いている.
第三者によるインタビューによるルポのような感じの本である.
"Q&A" の書評でも書いた気がするが, 本書の構成は宮部みゆき氏の "理由" に似ている.
が, 内容は似ても似つかぬものである.
本書を読んでいて, 私が一番気になったのは, 一人称が誰なのかが分からないことである.
言ってみれば主人公不在の小説である.
第三者的見地で物事を捉えるために本書のような書き方をするのは悪くはないが, いつまでも種明かしがないのは, 読み終えたときに釈然としない.
あからさまに種明かしをする必要はないが, もう少し, 読みやすくしても良いと思う.
それがやはり, 恩田氏と宮部氏の作品の差として歴然と表れている.

"Q&A" にしても同じだった.
確かに "ユージニア" の方が事象が明確になっている分, 分かりやすいが, 本全体の構成としてはやはりいまいちだと思う.
読み切りになっているから読みやすいのかもしれないが, 全体が支離滅裂でまとまっていない感じがした.

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まひるの月を追いかけて

果たしてこれはミステリーなのだろうか???

奈良で消息を絶った兄(異母兄)を探しに, 兄の元恋人と一緒に旅に出た主人公の静.
が, その旅の途中元恋人は全くの別人であることを知ってしまう.
そして, さらに, 元恋人と名乗っていた女性が言うには, 元恋人は既に死んでいる.
さらに, ようやく, 目の前に姿を見せた兄の口からは予想外の言葉が発せられた.
そしてこのたびの行き着く先には....

確かにこれだけ聞くとミステリーかもしれない.
が, 単にサプライズを繰り返しているようにしか見えなかった.
主人公の静が何を望んで旅をしているのか, そして, 静の兄は何を求めて姿をくらましたのか.
兄に関わった, 元恋人と二人の友人と名乗る女性は何者なのか.
そして, 何故命を絶ったのか.
それらを羅列しているようにしか見えない.
エンディングはそれなりの形を整えているが, ミステリーとはちょっと言い難い.
これが恩田ワールドと言われれば, そうかも知れないが, ちょっとというよりかなり物足りない.

ただ, 本書で面白かったのは, 奈良を旅行する記述である.
奈良というと修学旅行で, つまみ食いするかのようにしか回らないことが多いが, 本書では, かなり分かりやすく, そして, 系統的に歩いているように見える.
それも車などを使わずに歩いている.
描写の曖昧さはあるが, 奈良の景色がかいま見えた感じがした.

私も奈良は修学旅行でしか行ったことがない.
その時は, 大和三山をのぼっただけだが....
たぶん, 他の人とは違った奈良旅行だったと思う.
本書を読んでみて, また奈良を歩いてみたくなった....

そんな時間はなかなか取れないと知りつつも....(。>。<。)

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朝日のようにさわやかに

"図書室の海"以来の短編小説集.

大小14編の小説が掲載されている.
が.....
正直, 恩田氏の短編は短すぎて, 何が言いたいのかよく分からない(^^;;)
というより, 私には難しい.

水野理瀬シリーズの番外編である, "水晶の夜、翡翠の朝" は緊迫感もあり, ミステリー性も兼ね備えていてなかなか面白かったが, それ以外の作品は恩田氏の解説を読んでもなお理解できなかった.
読者全てに分かりやすく書く必要はないと思うが, こうまでわかりにくい作品を並べられると.....
ちょっと食わず嫌いになってしまいそうな気がする....

彼女の色をもう少し上手に表現できるとより一層良い作品が描かれると思うのだが.....

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中庭の出来事

難しい.
この一言に尽きる作品だった.

恩田氏得意の舞台をテーマに作品なので期待していたのだが, ストーリー設定が異常に難しく, 途中まで読み進めないと何がどうなっているか分からない.
劇中劇のシナリオを小説にしているため, ストーリーが入れ子になっている.
さらにその劇中劇が, 小説の中でも起きている内容とダブっているため, より複雑にしてしまっている.
そして本当の真犯人がいるのか, それとも, それすら劇中なのか, 最後の最後まで分からなかった.

その意味では, この作品は他の恩田作品と比べても, 奥が深く, 内容が濃いように感じた.
が, 何はともあれ, 難しすぎる.
人物のプロット一つとっても, 登場人物が明確にならず, 女優Aだの彼女だの彼だので話が進んでいくから, 誰と誰が同一人物であるかを理解するのに非常に時間がかかってしまう.
そのあたりは冗長であっても分かりやすくかいてもらえると, 恩田氏の作品自体より分かりやすくなるように思える.

チョコレートコスモス を読んで期待していた分, 期待が外れてちょっと残念だった.

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クレオパトラの夢

恩田陸さんの MAZE の続編.
MAZE の時の主人公が今度は, 北海道(たぶん函館)を舞台に活躍する.
主人公神原恵弥に託されたのは, 双子の妹を東京に連れて帰ること.
そしてもう一つは, "クレオパトラ"と呼ばれたプロジェクトの真相を解明することだった.
誰が味方で誰が敵が目まぐるしく変わるストーリーだが, その結末は意外な方向に......

MAZE のときにも感じたが, ミステリーにしては, このシリーズは, インパクトが弱い.
クレオパトラの夢も, ミステリー調で描きながら, その実は何に起こっていないことになっている.
果てしてこれがミステリーなのかと言われると, ??? な感じである.
個々のプロットは非常にユニークなキャラクターで良いのだが, それだけである.
ストーリーに生かし切れていない感じがする.
恩田氏の作品をかなり読み込んでいるが, どうもミステリーがミステリーとして書かれていないような気がする.

恩田氏完読まで 10 冊を切ってきたが, 彼女の色は舞台, 芝居をテーマにした話だと思う.
それ以外の作品はいまいちピントがぼけている.

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ネクロポリス

久々に読んだ恩田氏の本.
アナザーヒルと呼ばれる, 死者とコンタクトが取れる不思議な土地で巻き起こる, 連続殺人.
そして, その真相は意外な方向へ向かっていた...

この本はミステリーなのかもしれないが, ミステリーにしてはちょっといまいち.
が, もし, 死んだ人に会うことができる場所があるなら行ってみたい.
誰でも彼でも会えるとなるとちょっと不気味な感じもするが, 自分が親しかった人, 死に目に会えなかった人には会ってみたい.
そして話してみたい.
そんな世界があればの話であるが....

このネクロポリスはそんな世界を舞台にしている.
そして, そこで切り裂きジャックをもじった連続殺人犯が登場するのだが....
正直これは余計であると思う.
もしミステリーの要素を加えたいのであれば, オリジナル部分で話をすればよいのに, なぜか史実を持ち込んできてしまっている.
このあたりが, ストーリーを陳腐化させてしまい, 面白さを欠いてしまったように思えた.
そしてやはりエンディングの脆さ.
急ごしらえのエンディングの感がある.
もう少し丁寧に終わりにすれば, 物語としては良かったのだが.....
ちょっと残念である.

長い割に, 読んだという達成感よりも, やっと終わったというような感想が最初にきてしまうような作品だった.

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Q&A

これと言った主人公がいるわけでもなく, 質問とその回答を綴った小説.
事件は住宅街にあるショッピングモールで起きた.
原因もなく, ただパニックになって多くの犠牲者がでた.
そして, その事故に関わった人たちへのインタビューや会話だけである.
登場人物にはいろいろな人がいる.
事件の後遺症を抱える人, その事件をビジネスに結びつける人, 原因を吹聴する人....
事件が起きているからハッピーエンドにはならないと思うが, ちょっと後味が悪かった.

そして, この作品は, 宮部みゆき氏の"理由"やそのモデルになっている短編小説の"不文律"に似ている.
同じような書き方をしているにも関わらず, この "Q&A" が冴えないのは, やはり, 登場人物のプロットが甘いからだろうか...
それがちょっと残念だった.

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蛇行する川のほとり

恩田氏得意の学園ものの様相で始まったこの作品.
ところが全く違った.
ちょっとしたミステリーと行った感じだろうか.
ミステリーとしては最後の落ちが今ひとつだったような気もする.
物語はある町の高校生が10年近く前に起きた事件と事故の真相について, それに関わった少年少女が謎解きをしていくという話.

ストーリー的には上述のように学園物にミステリーの要素をあわせた感じだが, 構成が面白かった.
この作品は三分冊になっていて, それぞれ異なる少女が語り部になって物語が進んでいく.
そして, 最後のこの作品のキーパーソンの香澄の章で物語が閉じている.
この書き方は"黒と茶の幻想"に似ていて, おそらく恩田氏が得意とする書き方なのかもしれない.
私個人としてはころころ主体が変わるのは読みにくくなるので, 余り好きではないが, この作品のように, 本が分かれると, まぁ読めると思った.

さすがに恩田氏の作品を続けて読んでいるとマンネリ化した感がある.
宮部氏も新刊"DB4"を出したことだし, 今度は宮部ワールドも繰り広げてみたい!

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ドミノ

恩田氏にしては斬新な切り口だったが, ちょっとドタバタしすぎた嫌いがある.

物語は, 東京駅を舞台に, 普段全く関係ない人たちが, ちょっとしたことで関わり合ってしまい, とんでもない事件に発展してしまったというような話である.
が, まず, 登場人物が多すぎる.
ドミノラリーを意識させたかったのかもしれないが, もう少し人物を搾って, 各人物のプロットを明確にした方が緊迫感があり, 落ち着いた話になったと思う.
そして, 爆弾をいれた袋を二度三度取り違えてしまうという筋もいまいち.
どこかで聞いたことがある話である.
それをたった一日の話にしてしまったために, ドタバタしすぎてしまい, 全体としてまとまりがなくなってしまったような気がする.

一方で, 一日の流れにまとめたが故に, スピード感があったのも事実だった.
一気に読める反面, 筋の甘さが目立ったしまったのが残念だった.

新たな恩田氏の世界を切り開こうとしたのかもしれないが, この手の話には向かないと思う.
彼女の彼女らしい所以はやはり, "本"に対するこだわり.
そして, 演じることへのこだわりだと思う.

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MAZE

勝手に本屋さん大賞をやっていた所為で恩田氏の本からずいぶん遠ざかっていた.
調べて見たら, なんと二ヶ月ぶりだった.
そして, 二ヶ月ぶりに読んだのが, この MAZE.

ストーリーは西アジアの辺境にある, 白い建物で人が消えるという物語.
その謎を解くために, 向かった 4 人の人々だが, 一人消え, 二人消えた.
そして, ついにこの白い建物の謎が明かされるのだが.....

といったようなミステリー調の話だった.
引き込む力は相変わらずすごいと思う.
が, やはり, 筋全体がいまいちだった.
ミステリーならば終始それに徹すれば良いものを, 中途半端に終わりにしてしまっている.
あの.  "チョコレートコスモス" や "六番目の小夜子" に見たキレが感じられなかった.
人を引き込む力があるのだから, 引き混み続ける力があると, 恩田氏の作品は一段と冴えると思う.
恩田氏ワールド制覇も目前に迫ってきているが, 宮部氏のような読む作品ごと惹かれていくパンチ力はいまいちのような気がする.

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ロミオとロミオは永遠に

恩田氏の作品はどうも解説を読まないと作者の意図が伝わらない?(・_。)?(。_・)?
本書もそうだった.

読んでいるときには, 正直 20 世紀の文化のパロディかと思った.
章のタイトルが全て映画のタイトルになっている点などは非常に面白かったが, 20 世紀の文化をちょっと小馬鹿にしている感があり, 個人的にはちょっと感に障った.

が, このように小馬鹿にした描き方は決してパロディではなく, 恩田氏の 20 世紀以降の文化への警鐘だった.
自由を重んじた結果, 文明が衰退し滅びてしまう.
その反省を込めて今度は逆に規則で縛り付ける.
舞台を高校にし,その中で矛盾を感じる高校生を主役にしている.
そして, その高校に矛盾を感じた生徒たちが今度は脱走を計画する.
脱走の末, 行き着いたところは.....

本書を読み終わり, 解説を読んでようやく, 恩田氏がならした警鐘の意味が分かってきた.
恩田氏が恩田氏なりにならした警鐘は, ある意味では的を射ていると思う.
この国は, このまま行くと本当にこんな世の中になってしまうのかもしれない.
この本の中で今問われているのは, この国のカタチだったのだろうか....

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禁じられた楽園

タイトルから想像するに, ネバーランドみたいな学園ものを想像した.
が, 全く違った(^^;)
むしろ, リングを思わせるような話だった.
そう.
最後の数ページまでは.

この本の楽園とは人の喜怒哀楽を糧にしている.
そして, 感情を増幅して, 相手にぶつける存在だった.
だから, 負の感情が強ければ, 過去に引きずった嫌な思い出が増幅されてしまう.
事故で人を殺してしまった人はその人の影や声や当時の思いがよみがえってその人のイメージとして具現化されてしまう.
それは映像をとしても.
だから, 途中まではリングみたいイメージを持っていた.
でもちょっと違った.
この楽園とは, 感情を糧にしている.
だから, 正の感情が負の感情を凌駕すれば, 楽しかったイメージが具現化されることになる.
それを最後の数ページでサラッと書いている.
ミステリーと言うには, 尻切れトンボだし, ホラーと言うと物足りない.
結局, 恩田氏の言いたかったことがよくわかない内容の本だった.

もしかすると, 個人の感情は個々人の意志の強さと本質を見極める眼によって決定づけられると恩田氏は言いたかったのだろうか????
そして何よりも大切なものは無償の愛情だと.


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劫尽童女

この本を読んでいるときに最初に感じたことは横山光輝氏著の"その名は101"に似ているという点だった.
"その名は101"はいわゆる"バビル2世"の続編として書かれている作品である.
そして, 読み進めていく内に, 宮部みゆき氏の"クロスファイア"の影がちらちらと見えてきた.
その答えは, 本書を読み終えたときに明らかになった.
本書自身も漫画をモデルにし, さらに"ファイアスターター"も参考にしているとのこと.
宮部氏のクロスファイアもファイアスターターがモデルになっていると聞いたことがある.
作品同士, どこか繋がっている感じがした.

確かにこの手の作品はスピード感があり, 読み手を引き込む力はあるが, その一方で現実離れしすぎてしまっている.
故に, よほどストーリー展開を考えないとストーリ自体, 陳腐化してしまう.
スピード感とストーリの展開は別物である.
残念なことに恩田氏の"劫尽童女"は筋の荒さが目立った.
どんでん返しを意識しすぎたために, 筋に無茶が生じてしまっているように感じた.
その前に読んだ"チョコレートコスモス"が良すぎた故に, この作品には興ざめしてしまった.

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こちら側とあちら側

なんの世界にこちら側の世界とあちら側の世界があるのかもしれない.
それを最近まざまざと思い知らされたのが,  梅田氏 "ウェブ進化論"だ.
ウェブ進化論は, インターネットのこちら側とあちら側を比較していた.

そして, チョコレートコスモス.
これは芝居(というより舞台)のあちら側とこちら側を比較している.
その道先案内人を, 芝居を初めて間もない佐々木飛鳥という少女に託している.
それが, この本を一段と引き立てているように思えた.
もし, 芝居を熟知しているような人が, 知ったような口ぶりで語ってしまってはおそらく, "あ、そうなんだ" で終わってしまったと思う.
が, 自分が知りたい世界を自分の手でたぐり寄せたいと思う思いに人間味を感じた.

なんの世界にもこちら側とあちら側があるのだろう.
恩田氏はおそらく, 芝居に限らず, いろいろなもので, それを描きたかったのでないかとを思えてきた.
それを表現する対象が芝居であったり, 超科学現象であったりするのではないだろうか?
次に恩田氏が放つ, あちら側の世界はどんな世界なんだろうか.....

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24時着0時発とチョコレートコスモス

24時着0時発.
これは, 中島みゆき氏が渋谷文化村で 2004 年に演じた夜会 Vol.13 のサブタイトルである(その 2 年後の 2006 年にも再演している).
このテーマは宮沢賢治氏の銀河鉄道の夜であり, それを彼女自身がアレンジしている.
そして, そこに影の自分が登場している.

チョコレートコスモス.
この中で行われた第二次選考のオーディションのテーマが"欲望という名の電車"の主人公のブランチ役の影の役だった.
素人の私が考えると, 影というと, メインの人とそのメインの人の心の声を演じるもう一人.
と考えてしまう.
だから, このチョコレートコスモスを読んでいるときに, 頭に思い浮かんだのも, 心の声だった.
到底影そのものを演じるという発想はなかった.
だから, 夜会のことも頭に掠めなかった.

ところが, チョコレートコスモスに登場する主役の一人, 佐々木飛鳥は影そのものを演じた.
初めて, 夜会のシーンがシンクロした.
佐々木飛鳥と東響子のシンクロではなく, 私には, 夜会とチョコレートコスモスがシンクロした.
面白い.
この佐々木飛鳥の発想(要は恩田氏の発想だが...)は実に面白かった.
芝居をやる人はそうは感じないのかもしれないが, 素人の私には久々に感情移入できる登場人物に巡り会えたような気がした.

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チョコレートコスモス

恩田氏は"本"というものに対する執着心が強いと思う.
"三月の深き紅の淵を"などがその一例だ.
そして, もう一つ.
芝居というものについても, 彼女はこだわっているように思える.
その代表が, 梶原憂理を絡めた数々の作品.
そして, 今回の"チョコレートコスモス"だ.
この"チョコレートコスモス"は宮部みゆき氏が得意としている, 点から面を作り出すように話を展開している(このようなストーリーを勝手にクリスタルストーリーと読んでいるが...).
この本では, 神谷という脚本家, 東響子という女優, そして, 学生の佐々木飛鳥の 3 人が中心になり, 個々のストーリーを展開しつつ, 最後に一つにまとめあげていく話である.
神谷と呼ばれる男が唯一ファーストネームがなかったので(その他の役で, ファーストネームが表れなかった人はいるが...), 彼がやはり主役の位置なのだろう.
そして, この本には, 本を読むだけで, 芝居の雰囲気にのめり込んでいく何かがあった.
ただ, 残念だったのは, 主役格の一人, 佐々木飛鳥に関する記述が冗長すぎた点である. この部分がなければ, なお良かったと思う.

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ネバーランド

登場人物を覚えられない.
というより, 誰が誰なのかを同定するのが困難だった.
というのが, この本を読んでいるときの感想だった.

冬休み寮に残った 3 人とその寮に遊びに来た 1 人の学生の物語なのだが,読んでいてもすぐ読み直してしまう.
それくらい登場人物のキャラクターの陰が薄い.
和物を読んでいると言うより洋書(訳本)を読んでいる感じだった.
そしてこの違和感は読み終わった後の恩田氏のコメントを読んで気づいた.
彼女自身作品を書きながら登場人物のプロットを決めつけていなかった(ようだ).
決めていたのだが, 完全なものになったのは物語の真ん中に差し掛かったあたりとか.
それ故, 読者(特に私)には, 誰が誰だか分からなくなってしまったように思う.

恩田氏得意の学園もの故にちょっと物足りなかった.

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蒲公英草紙

恩田陸氏の常野物語シリーズ.
常野シリーズはシリーズを謳っていながら, 登場人物も時代背景も全く異なっている.
ただ, 常野という特殊な能力をもつ一族の話に終始している.
その前に読んだのエンドゲームはストーリ展開がよく分からなかった.
それに対して, 蒲公英草紙は物語の展開は非常に分かりやすい.
その上, この本は非常にきれいな文章で書かれている.
恩田氏がこのような文章を書くことが出来ることに正直驚いた.
そして, この蒲公英草紙に登場する春田一族が前々作の光の帝国の主人公へと繋がっていくように 感じさせている.
恩田氏特有の小説間での人物のつながりである.
そう言った意味で, 恩田ワールドが凝縮した一冊と感じた.

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上と外

恩田陸氏の書き下ろし作品に"上と外"というのがある.
最初は離婚した家族の現代的な話から始まったので, 恩田さんの新しい路線かなと思い, 読み進んで行くと, 一転, 彼女の得意のミステリー的な色が濃くなってきた.
が, あまりにも話が稚拙すぎた.
彼女自身, 南米を旅行したことがないと言っておきながら, 南米のジャングルのことを書いたりしている.
完全な SF ならいざ知らず, 現存する舞台を文字だけで想像するにはあまりにも描写がお粗末だった.
それが, ストーリーにもにじみ出てきていた.
確かに読みやすく, 一気に読んでしまうが, 展開も簡単に想像できてしまうので, ひねりもおもしろさもない.

が, まんざら悪い小説でもないと思う.
それは彼女が放つ言葉である.
おじいちゃんが孫に紙飛行機をどちらが遠くに飛ばせるかという遊びを教え, どうしたら遠くに飛ぶかを孫に考えさせる.
簡単に答えを教えず, 遊びの中から, その子供が興味を持つようにし向けるようにしている.
そんな内容が書いてあった.
たかが紙飛行機, たかが子供の遊びと笑い飛ばす人もいるかもしれないが, 子供に興味を持たせ考えさせるというプロセスを彼女は上手に描いている.
今教育に一番たりないことを彼女はさらりと書いている.
そう言うことができるのである.

この小説は小説のストーリーよりも彼女が放つ言葉に重要なメッセージが隠されているような気がした.

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パイロキネシスト

念力放火能力者のことをパイロキネシストと言うらしい.
そのパイロキネシストを主人公にした小説を宮部氏が書いている.
"燔祭"と"クロスファイア"である.

そして, 恩田氏も"光の帝国"の中でパイロキネシストを登場させている.
二人の共通点を見た気がした.

しかしながら, どちらかというと, 宮部氏の方が私は読みやすい.
恩田氏は難しく書きすぎているように思える.
この"光の帝国"にしても短編を集めていながら,  話が飛んでしまっている.
それがつながっていれば非常に読みやすいのだが...
ちょっと残念である.
たとえば"図書室の海"の中に収められている"春よ、こい" も時間が前後してしまい, よくわからない部類の小説になってしまう.
"ライオンハート" も時代, 時間が前後してしまい, 筋を追うのに苦労する.
これが恩田氏らしさと言えばそれまでかもしれない.

そして, 恩田氏と宮部氏の決定的な違いは, 引き出しの多さだと思う.
宮部氏の方が圧倒的に引き出しが多いので, 筋も時代も主人公も多種多様になってくる.
それに対して, 恩田氏は 3, 4 種類のテーマについて手を変え品を変えているに過ぎないように思える(まざ彼女の作品を全て読んでいないので, なんとも言えないが.....).

作風が似ているが故に, 読者としてはお互いを意識して比較してしまうが,  二人の作品を読むと次はどんな作品を書くのだろうとワクワクしてしまう.

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